この本の物語部分はフィクションです。登場する町・人物・事件は架空のもので、実在の地名や人物とは関係ありません。一方、物語の中でアカリや登場人物が使う技術・数字は、各章の「解説」と「出典・参考」に基づいています。
舞台:霧ヶ丘
山あいの盆地にある人口約2万人の地方都市。町の真ん中を霧川が流れ、川下には港地区がある。物語は7月のある夜、巨大な磁気嵐で広域の送電網が損傷し、停電が長期化したところから始まる。
この「崩壊」はゾンビも爆発も出てこない、静かな機能停止だ。人は生きている。けれど、電気・水道・通信・物流・決済という、互いに依存し合うシステムが一斉に止まった。拠点になるのは、廃校になった旧・霧ヶ丘第二小学校の体育館。最初は避難所だったこの場所は、やがて町の「工房」になっていく。
登場人物
アカリ(AKARI)
オフラインAI
高槻レイが作った、ネットにつながらなくても動くAI。頑丈なミニPCとSSD、折りたたみ式の太陽光パネルと蓄電池でできている。中身はローカルで動く言語モデル、オフライン百科事典、レイが集めた技術マニュアル。話し方は丁寧で短く、答えには必ず「確信度」と「根拠」を添える。知らないことは「わかりません」と言える——はずだった(第8章)。
真柴ナギ(ましば・なぎ)
17歳・アカリの操作係
高槻レイの姪。工房の合鍵を持っていたことから、アカリを最初に起動する。機械には詳しくないが、好奇心が強く、問いを立てるのがうまい。「AIに答えを聞く人」から「AIと一緒に問いを立てる人」へ成長していく。
葛城ゲン(かつらぎ・げん)
68歳・元旋盤工、電気工事士
町工場で40年、旋盤を回してきた。口癖は「機械に命は預けねえ」。図面よりも指先が覚えている知識の持ち主。アカリを疑いながらも、やがて子どもたちの師匠になる。
宮下ハル(みやした・はる)
34歳・看護師
厳密で、根拠のない数字を嫌う。避難所の衛生と医療を仕切る。アカリの「もっともらしい誤り」に最初に気づき、「出典のない数字は言わない」というルールを作らせる。
宮下小春(みやした・こはる)
9歳・ハルの娘
口癖は「なんで?」。体育館の学校の最初の生徒になり、ゲンの旋盤の前に立つ。物語の最後、10年後の姿で再び登場する。
高槻レイ(たかつき・れい)
アカリの設計者・行方不明
崩壊の夜は出張中で、そのまま連絡が途絶えた。工房に残された「設計ノート」が、章の節目で人びとを導く。ノートの最後のページに何が書かれているかは、第14章で明かされる。
権藤(ごんどう)
港地区のまとめ役
現実主義者。限られた物資を公平に配るには、感情のない機械に決めさせるのが一番だと考え、アカリに配給の決定を任せたがる(第12章)。敵ではなく、別の答えを持つ人。
アカリの構成(作中の設定)
| 部品 | 作中の設定 | 解説する章 |
|---|---|---|
| 計算機 | ファンレスのミニPC。メモリ32GB。 | 第3章 |
| 言語モデル | 数十億パラメータ級のオープンウェイトモデルを4ビット量子化して搭載。 | 第3章・第8章 |
| 知識 | オフライン百科事典(Kiwix形式)、技術マニュアル、医療・防災の手引き。 | 第10章 |
| 電源 | 折りたたみ太陽光パネルと小型蓄電池。 | 第6章 |
| 設計原則 | オフライン優先、電力予算、確信度と根拠の提示、人間が決める、止まっても困らない。 | 第3章・第14章 |
時系列
- Day 0〜3:停電。アカリ起動。避難所の最初の72時間(第1〜4章)
- Week 2〜Month 3:技術ツリー、マイクログリッド、水車の失敗、アカリの誤り(第5〜8章)
- Month 4〜8:冬支度の計画、調べてから答えるアカリ、学校の始まり(第9〜11章)
- Year 1〜3:権藤の提案、ロボット、落雷の夜(第12〜14章)
- Year 10:エピローグ(第15章)