第12部 混乱しやすい比較特集第21章

よく混同される用語まとめ

GGUFとsafetensors、量子化と蒸留、エージェントとワークフロー……。似ているようで違う用語を「どっちがどっち?」形式で一気に整理します。

約13分で読めます2026年10月改訂

このページの内容(9項目)
  1. モノとファイル
  2. 軽くする3つの方法
  3. 動かす道具
  4. モデルを「自分用」にする
  5. 数字の読み方
  6. エージェントまわり
  7. ラベルの読み方
  8. さらに深く学ぶ
  9. 出典・参考

「Ollamaで動くGGUFのモデルを、LoRAで量子化した」。どこがおかしいでしょう?

答えは「LoRAで量子化」です。LoRAは追加学習のやり方で、量子化は軽くするやり方。この文はそもそも混ざっています。LLMの世界には、こういう「似た場所に出てくるけれど役割が違う」用語がたくさんあります。この章では、それを2〜3語ずつ並べて、どっちがどっちかをはっきりさせます。

ひとことで言うと

迷ったら「それはモノか、形式か、道具か、やり方か」を考える。カテゴリが違えば、比べる相手を間違えているサインです。

モノとファイル

モデル vs 重み vs チェックポイント

用語ひとことでたとえ
モデル構造(アーキテクチャ)と重みを合わせた「動く仕組み」全体レシピと材料がそろった料理
重み(weights)学習で決まった数値の集まり計量済みの材料
チェックポイントある時点の重みなどを保存したファイル途中経過のセーブデータ

見分け方: 「ファイルとして保存した、ある時点の重み」ならチェックポイント。日常会話では3つともまとめて「モデル」と呼ばれがちです。詳しくは第2章。

GGUF vs safetensors

GGUFsafetensors
主な居場所llama.cpp・Ollama・LM StudioHugging Face の transformers など
中身重み+トークナイザやチャットテンプレートなどのメタ情報を1ファイルに重み(テンソル)を安全に保存。設定は別ファイル
量子化Q4_K_M などの量子化済みで配られることが多い16bit の元の重みで配られることが多い

見分け方: どちらも「ファイル形式」。ローカル実行向けの単体ファイルならGGUF、学習・研究向けの元の重みならsafetensors。第4章・第5章へ。

どっち? Q4_K_M は何の名前?

  • ファイル形式
  • 量子化の方式
  • モデルの名前

Q4_K_M はGGUFの中で使われる量子化方式の名前です。GGUFは入れ物、Q4_K_Mは中身の詰め方。

軽くする3つの方法

量子化 vs 蒸留 vs 枝刈り

方法何をする?たとえ
量子化(quantization)重みの数値を少ないビット数で表す写真の色数を減らして容量を小さく
蒸留(distillation)大きいモデル(先生)の出力を手本に小さいモデル(生徒)を学習ベテランの答え方を新人がまねて覚える
枝刈り(pruning)効きの弱い重みや部品を取り除く庭木の不要な枝を切る

見分け方: パラメータ数が変わらず「1個あたりのビット数」が減るなら量子化。モデルそのものが別の小さいモデルになるなら蒸留。中身を間引くなら枝刈り。量子化は第10章で。

どっち? 「70Bモデルの答えをたくさん集めて、8Bモデルに学習させた」

  • 量子化
  • 蒸留
  • 枝刈り

大きい先生モデルの出力で小さい生徒モデルを育てるのが蒸留です。量子化なら8Bにはならず、70Bのまま軽くなります。

動かす道具

llama.cpp vs Ollama

llama.cppOllama
正体推論エンジン(C/C++のライブラリとツール群)モデル管理と実行をまとめたアプリ
得意細かい設定、幅広いハードウェア対応ollama run モデル名 で即会話
たとえ車のエンジンエンジンを積んだ完成車

見分け方: フラグを細かくいじりたいなら llama.cpp、とにかく動かしたいなら Ollama。Ollama の README は謝辞で llama.cpp を挙げています。第7章・第8章へ。

ランタイム vs UI

ランタイム(推論エンジン)UI
仕事重みを読み込み、トークンを計算して出す人が入力し、結果を見る画面
例llama.cpp、vLLM、MLX-LMOpen WebUI などのチャット画面

見分け方: 画面を閉じても動き続けるのがランタイム。LM Studio のように両方を1つにまとめたアプリもあるので、混ざりやすいのです。第6章へ。

学習 vs 推論

学習(training)推論(inference)
何をするデータから重みを決める・更新する決まった重みで答えを出す
重みは変わる変わらない
たとえ受験勉強本番の試験

見分け方: 使ったあとに重みが変わっていれば学習、変わっていなければ推論。ChatGPT に話しかけるのは推論です。第12章へ。

どっち? Open WebUI を閉じたら、裏で動く Ollama も必ず止まる

  • 止まる
  • 止まらない(別のソフト)

Open WebUI は画面(UI)、Ollama はランタイム。UIを閉じてもランタイムのサーバーは動き続けます。

モデルを「自分用」にする

ファインチューニング vs RAG vs プロンプト

方法変えるもの向いていること
プロンプト入力の書き方だけまず試す。口調・形式・手順の指定
RAG入力に、検索した資料を足す社内文書や最新情報に基づく回答
ファインチューニング重みそのもの独特の文体・形式・振る舞いを身につけさせる

見分け方: 「知識を足したい」ならまずRAG、「癖や型を覚えさせたい」ならファインチューニング。どちらの前にもプロンプトの工夫を試します。たとえるなら、プロンプトは指示書、RAGは持ち込み可の資料、ファインチューニングは研修です。第19章・第12章へ。

LoRA vs QLoRA

LoRAQLoRA
やること元の重みは固定し、小さな追加行列だけ学習LoRAと同じ。ただし元の重みを4bitに量子化して載せる
うれしさ学習する量と保存サイズが小さいさらに少ないGPUメモリで学習できる
提案Hu ら(2021)Dettmers ら(2023)

見分け方: QLoRA の Q は量子化(Quantized)。「LoRA + 4bitで載せた土台」です。第13章へ。

どっち? 「先月の社内規程に沿って答えてほしい」

  • RAG
  • ファインチューニング

頻繁に変わる知識は、検索して入力に足すRAGが向いています。重みに覚えさせると、規程が変わるたびに学習し直しです。

数字の読み方

パラメータ数 vs 総パラメータ / アクティブパラメータ

用語意味効いてくるもの
総パラメータモデルが持つ重みの総数必要なメモリ
アクティブパラメータ1トークンの計算で実際に使う重みの数計算量・速度

普通の(dense)モデルでは2つは同じです。違いが出るのは MoE(Mixture of Experts)。たとえば gpt-oss-20b は総パラメータ約210億、アクティブ約36億です。Gemma 4 の「26B A4B」のような名前の A は Active を表します。

見分け方: メモリの見積もりには総パラメータ、速さの見積もりにはアクティブ。第26章へ。

コンテキスト長 vs 出力長

コンテキスト長最大出力長
意味一度に扱えるトークンの総量(入力+出力)1回の返答で生成できるトークン数の上限
たとえ机の広さ1回に書ける答案用紙の枚数

見分け方: 「長い資料を読めるか」はコンテキスト長、「長い文章を一気に書けるか」は出力長。「256K対応」でも、出力は別の上限で止まることがあります。ローカルでは、ツールの既定値がモデルの最大値より小さいこともあります(第23章)。

トークン vs 文字

トークン文字
誰の単位モデル(トークナイザ)の単位人間の単位
数え方トークナイザごとに違う見たまま

見分け方: 料金・コンテキスト長・速度(tokens/s)はトークンで数えます。同じ日本語の文でも、トークナイザが違えばトークン数は変わります。第2章へ。

どっち? MoEモデルのメモリ見積もりに使うのは?

  • 総パラメータ
  • アクティブパラメータ

使う専門家(エキスパート)はトークンごとに変わるので、全員分の重みをメモリに置いておく必要があります。

エージェントまわり

エージェント vs ワークフロー

ワークフローエージェント
手順を決めるのは人が書いたコード(決まった道筋)LLM自身(状況を見て次を決める)
たとえレシピどおりに作る冷蔵庫を見て献立から考える
向き手順が決まっていて予測しやすさが大事手順を事前に決められない作業

この区別は Anthropic の記事「Building effective agents」の定義に沿っています。そこでは両方をまとめて「エージェント的なシステム」と呼んだうえで、道筋が事前に決まっているかで分けています。

見分け方: 「次に何をするか」を誰が決めるか。第20章・第28章へ。

MCP vs function calling vs API

用語ひとことでたとえ
APIソフト同士が呼び合う窓口全般お店の注文カウンター
function calling(ツール呼び出し)LLMが「この関数をこの引数で呼んで」と構造化して出力する仕組み店員への注文票の書き方
MCPAIアプリと外部のツール・データをつなぐ共通規格AIアプリ用のUSB-C

見分け方: function calling は「モデルが呼び出しを頼む」話。MCP は「どのツールをどうつなぐか」の共通規格。実際に関数やAPIを実行するのは、どちらの場合もアプリ側です。MCP は2024年11月に Anthropic がオープンソースで公開し、公式サイトは「AIアプリケーションのためのUSB-Cポート」とたとえています。

どっち? 「請求書チェックは毎回、読取→照合→通知の順に固定で実行する」

  • ワークフロー
  • エージェント

道筋がコードで決まっているのでワークフローです。途中でLLMを使っていても、それは変わりません。

ラベルの読み方

オープンウェイト vs オープンソース

オープンウェイトオープンソースAI(OSAID)
公開されるもの重み(ライセンスはさまざま)重み・学習と推論のコード・学習データの詳しい情報
条件利用制限つきのこともあるOSI承認の条件で、使う・調べる・改変する・共有する自由

OSI(Open Source Initiative)は2024年10月28日に「Open Source AI Definition(OSAID)」1.0を公開しました。そこでは、改変に必要な形として「データ情報(Data Information)」「コード」「パラメータ」の3つを求めています。

見分け方: 重みだけなら「オープンウェイト」。重みが Apache 2.0 のような寛容なライセンスでも、学習データの情報やコードがそろっていなければ OSAID の意味での「オープンソースAI」にはなりません。宣伝文の「open-source」は、この定義と違う意味で使われることもあります。第3章へ。

ベース vs インストラクト vs 推論(reasoning)モデル

種類特徴名前の手がかり
ベース(base)事前学習だけ。文章の続きを書く-Base、-pt
インストラクト(instruct)指示に従って答えるよう調整済み-Instruct、-it、-Chat
推論モデル答える前に考える過程を生成するthinking モードや推論の強さ(effort)の設定

見分け方: 質問に答えず続きを書き出したらベース。最近は1つのモデルで考える・考えないを切り替えられるものも多く、gpt-oss は推論の強さを low / medium / high で選べます。第27章へ。

ベンチマーク vs 実力

ベンチマークの点数あなたの用途での実力
測るもの決まった問題集での成績自分のデータ・言語・作業での使い勝手
落とし穴問題が学習データに混ざる(汚染)、満点近くで差が出ない試さないとわからない

見分け方: ベンチマークは模試の偏差値、実力は本番の仕事ぶり。候補を絞るのに点数を使い、最後は自分の課題で試します。第30章へ。

どっち? 重みが無料で配布され、商用利用もOK。でも学習データについては何も公開されていない

  • オープンウェイト
  • OSAIDの意味でのオープンソースAI

OSAIDは学習データの詳しい情報やコードも求めます。重みだけなら「オープンウェイト」と呼ぶのが正確です。

よくある誤解

GGUFにすると自動的に量子化される

GGUFは入れ物。16bitのままのGGUFもある。量子化はQ4_K_Mなどの別の話

ファインチューニングすれば最新知識を覚えてくれる

頻繁に変わる知識はRAGのほうが向く。微調整が得意なのは型や振る舞い

20Bのモデルなら毎回20B分の計算をしている

MoEならアクティブ分だけ。gpt-oss-20bは1トークンあたり約36億

確認クイズ

Q1. 冒頭の「LoRAで量子化した」を正しく言い直すと?

たとえば「QLoRAで微調整した(土台を4bitに量子化して載せ、LoRAで学習した)」、または「量子化したGGUFにLoRAアダプタを当てた」。量子化と追加学習は別の操作です。

Q2. 「モデルにツールの使い方を伝え、呼び出したい関数と引数をJSONで返させる」のは?

  • MCP
  • function calling
  • RAG

モデルが呼び出しを構造化して出力する仕組みが function calling。MCPはツールをつなぐ共通規格、RAGは検索結果を入力に足す方法です。

Q3. 「質問しても、質問文の続きを書き出してしまう」モデルは、たぶん?

  • ベースモデル
  • インストラクトモデル
  • 推論モデル

事前学習だけのベースモデルは「続きを書く」のが本業です。会話にはインストラクト版を使いましょう。

この章のまとめ

  • まず「モノ・形式・道具・やり方」のどれかを考えると、比べる相手を間違えない。
  • GGUFとsafetensorsは形式、Q4_K_Mは量子化方式、llama.cppはエンジン、Ollamaはそれを使いやすくしたアプリ。
  • 知識を足すならRAG、癖を覚えさせるならファインチューニング、その前にプロンプト。
  • MoEはメモリに総パラメータ、速度にアクティブパラメータが効く。
  • 「オープン」はラベルを確認。重みだけならオープンウェイト。

さらに深く学ぶ

この章の内容をもう一歩掘り下げるための原典です。

論文・資料ガイド全体を見る →

出典・参考

  1. The Open Source AI Definition 1.0(OSI) — 4つの自由、Data Information / Code / Parameters の要件(2026年10月確認)
  2. OSI: OSAID 1.0 公開の発表(2024年10月28日)
  3. Anthropic「Building effective agents」 — ワークフローとエージェントの区別
  4. Anthropic「Introducing the Model Context Protocol」(2024年11月25日) / What is the Model Context Protocol (MCP)? — USB-Cのたとえ(2026年10月確認)
  5. openai/gpt-oss-20b モデルカード — 総パラメータ21B・アクティブ3.6B、推論の強さ設定(2026年10月確認)
  6. Ollama library: gemma4 — Gemma 4 26B(MoE、アクティブ4B)(2026年10月確認)
  7. Hu et al. (2021) LoRA: Low-Rank Adaptation of Large Language Models
  8. Dettmers et al. (2023) QLoRA: Efficient Finetuning of Quantized LLMs
  9. Hinton et al. (2015) Distilling the Knowledge in a Neural Network
  10. ollama/ollama(GitHub) / ggml-org/llama.cpp(GitHub)(2026年10月確認)